一人暮らしのライフハック考

「ひとり暮らし男子の生活を向上させる5つのライフハック」(抜粋)
その1: 全自動乾燥機付き洗濯機を購入せよ
その2: シリコンスチーマーを有効活用しよう
その3: いつでもゴミ出せるゴミ捨て場付きのマンションがおすすめ
その4: テレビは液晶モニターPS3、トルネが良いかと
その5: 持たない生活を心がけつつマットレスはけちらない
http://d.hatena.ne.jp/gamella/20110403/1301839619

上の五つのライフハックは実に良く的を得ていると思うのだけど、どちらかと言うと社会人向けで、貧乏学生には実行しづらいし、実際僕もここに載っているのとは全然違う方法でそれなりに一人暮らしを満喫できてる。そこで自分も5つのライフハックを紹介してみようと思う。

その1 : 浴室乾燥機付きの部屋を選べ
洗濯物を干すこと自体は実際大して面倒でない。干してたたむ作業は合わせて15分ぐらいしかかからないので、週2回洗濯しても30分で、ネットに費やしている無駄な時間を考えれば誤差の範囲。
ただ、花粉や排ガスなどが付着するし、急な雨に降られたりすることもあるので、洗濯物を外に干すのは避けたいところ。でも、全自動乾燥機は服が傷むので、下着やタオルはともかく外向きの服は乾燥機にかけたくない。そこで便利なのが浴室乾燥機で、服は傷まないし雨に降られることもない。冬場はシャワーを浴びる前に浴室暖房を入れておくと湯船につからずとも身体が冷えることがない。浴室乾燥重要。
その2 : 学食を有効活用しよう
上述のように洗濯は大した手間ではないし、掃除にしても風呂掃除・トイレ掃除・部屋の掃除は各5分もかからないから時間ロスは近似的に無視できる。しかし、料理は掃除・洗濯とは異なり、材料の購入から後片付けまで入れると一回1時間程度かかる。超ブラックに時給300円換算としても材料費に300円かけたら合わせて600円となり、すき家だったらセットのみそ汁を豚汁変更してもお釣りが来るレベル。
ただ、毎日外食やコンビニ弁当だと栄養バランスが崩れてしまうのも事実。そこで、対象が学生に限られてしまうが、学食の活用を提案したい。味は値段相当であるものの、安くて栄養バランスに優れているし、夜遅くまでやっている上、一人で行っても友人にばったり会ったりするし、周りのテーブルの意識の高い議論をこっそり楽しむこともできる。
その3 : 早起きのインセンティブ付きマンションがおすすめ
一人暮らしの大学生にとって早起きは非常に難易度が高い。そこで、早起きしなければならないようなアーキテクチャを構成するのも一つの手である。例えば、朝早くゴミを出さなければならないとか、向かいの小学校がうるさくて朝8時以降は寝てられないとか。あるいは、徒歩圏ではなくあえて電車2駅分ぐらい離れた場所に住むと、逆に寝坊/遅刻のリスクが減るというのも良く知られた事実。
その4 : テレビは要らない
ワンセグぐらいはあった方が良いのかもしれないけれど、よほどスカパーで海外サッカーや大リーグが見たいというのがない限り、一人暮らしにテレビは必要ない。むしろテレビは受動的・世俗的・退廃的で、害悪の方が大きい。
その5 : 持たない生活を心がけつつ椅子はケチらない
ベッドも重要だけれど寝てる時はマットレスが心地よいかどうか分からないので、むしろ起きている時のメインの活動場所として、椅子に金をかけることをおすすめする。特にワンルーム/1Kの場合一つの椅子の上で食事から映画鑑賞、勉強、ネット散策までこなさなければならないので、できる限り長時間座っていても疲れない社長っぽい椅子を選ぶのが賢明。

>4/8 9:22 : 出だしの部分を少し変更

夏期節電対策の裏技

化学工学会の提案(http://pari.u-tokyo.ac.jp/earthquake/plan_SCEJ.html)などを見るに一つ重大な点が忘れられている気がするので書く。
夏期節電対策の最も有効な対策は地球工学を用いて気温を下げることである。
人工的に気温の上昇を防ぐことは元々地球温暖化対策の一環として精力的に研究されていて、いくつかは試験段階に入っている。
Wikipediaから、主な技術を引用するに、

地球温暖化対策としての地球工学(抜粋)
・太陽光遮蔽技術。宇宙空間の静止衛星軌道や、ラグランジュ点などにスクリーンや、金属片などを多数打ち上げ、地球に向かう太陽光の数%を遮断する技術のこと
成層圏硫黄酸化物などのエアロゾルを散布し、地球に降り注ぐ太陽光を遮断する。火山灰による温度低下(日傘効果)を人工的に引き起こす技術である。パウル・クルッツェンが提案
・氷雪の太陽光のミラー効果を応用し、地表を鏡あるいは白い布などで大規模で覆う技術。全ての建物を白く塗るだけでも効果があると言われている。
地球工学 from Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E7%90%83%E5%B7%A5%E5%AD%A6

このうち、巨大衛星による太陽光遮蔽は夏までの実現は不可能であろう。
硫黄酸化物エアロゾルの散布は既にフィールドリサーチが行われていて、実現可能性は高い。夏までに富士山が噴火すれば同様の効果が得られるが、この場合硫黄酸化物と一緒に炭化化合物も放出されてしまうので、噴火を待たずに人工的に散布した方が良い。具体的な効果は不明だが、ピナトゥボ山の噴火の際には北半球の平均気温が0.5-0.6度下がったとされ、局地的に上手く散布すれば高い断熱効果が得られるように思われる。
三番目のミラー効果は一番現実的である。各建築物の屋根に太陽光パネルを設置するのが理想ではあるが、そこまでの大量生産技術は整っていないしコスト面でも問題があり、その代替案として屋根を白く塗るあるいは白い布で覆うというのは魅力的であるように思われる。Google Earthで上空から東京を眺めるに東京ドームを除いて一面にくすんだネズミ色をしており、赤や茶色の屋根の反射能が0.1-0.35なのに対し、白い屋根の反射能は0.5-0.9であり、東京全体が東京ドームのように白くなれば屋根から吸収されるエネルギーは1.5分の1から10分の1程度になる。具体的な冷却効果がどの程度なのかは分からないが、このとき気温に有為な変化をもたらすだろうと推測できる。

参考 :
Solar radiation management / Wikipedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Solar_radiation_management

節電のティッピング・ポイント

学校もコンビニも飲食店も薄暗く暖房も効いておらず、電車は相次ぎ運休し、工場は操業を停止し、地域ごとの計画停電まで行っているのに依然電力供給が足りず、先日も夕方に大規模停電の発生する恐れから、会社員は日の高いうちから一斉に帰宅し、運行本数を減らした電車は超満員の混雑となった。
一体何が間違っているのだろうか。
おそらく、問題点は以下の3つで、
1) 家庭・中小企業での節電の不徹底
大企業はつるし上げを避けるために必至に節電を実行しているけれど、家庭と中小企業とは節電のインセンティブがなく必ずしも十分な努力をしてない。
2) オフピーク時の無駄な節電
東電全体で毎日1000万kw分の揚水発電が可能なようなので、深夜の節電も決して無駄ではないが、過度に意識する必要もない。http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1257949962
3) 分散・孤立化による電力使用量の増加
一昨日の記事(http://d.hatena.ne.jp/noarke/20110316/1300281913)でも書いたが、節電の影響で人々が分散・孤立化するとかえって電力使用量が増えてしまう恐れがある。

これについての包括的解決策を考える上での大きな制約は日本ではスマートグリッドが実施されていないことで、例えばエアコンにのみ電気は供給しないだとか、停電の恐れが生じた場合に自動的に洗濯機が止まるだとかは出来ない。したがって、最終的には個々人の努力にゆだねられることになるのだが、こういう一人一人の行動に如何にして影響を及ぼすかというのはマーケティングの分野で良く研究されていて、以下の3つの要素が重要になる。(以下「ティッピング・ポイント」/マルコム・グラッドウェルを参照)
a)少数者の法則
ある種の社会的な能力を持った少数の人間が非常に重要な役割を持つ。例えば、フォロワーの多いtwitterユーザは情報の拡散において重要である。
b)粘りの要素
特定の行動を広めるには、各人が継続して実行するような粘りの要素が必要になる。例えば、ACの「ぽぽぽぽーん」はその意味で成功している。
c)背景の力
人々の行動は想像以上に環境の条件に依存する。そのことを上手く利用しなければならない。

つまり、条件b,cを満たすような解決案を考案してアルファ・ブロガーなどにリプライしまくれば、誰でもこの電力危機から関東を救うことができる。でも、その解決案を考えるのは難しい。例えば、
i)電気代を10倍にして、差額分は復興のために寄付し、病院・電車などは免除する。
問題の根底は電気代が安すぎることにあるわけだし、居住地域によって電力供給量に差別が生じている現状を考えれば、この案の方が公平で良いと思われる。ただ、政府/東電がこの案を実行するとは思えず、あまり現実的でない。草の根的にできる運動を考えなければならない。
ii)夕方から夜の時間帯に同時多発的に野外イベントを開催する。
問題点1,3を踏まえるに、いかにしてピークタイムの人々の行動を制御するかが課題になる。一つの解決案としては、野外コンサートや花火、寄席などを開催して人々を集め、その時間帯に電気を使わせないというのが考えられる。ただ、子ども連れや高齢者を巻き込むためには地域ごとに小規模で実施する必要があり、その場合クオリティが保てず結局人が集まらないという事態になりうる。
iii)デマを煽る
食料不足や原発事故についてのデマを煽れば人々は勝手に関東地方から出て行くので、電力不足は解消する。今のところマスコミはこれに協力的であり、もしかしたら一番現実的な案かもしれない。しかし、デマの流通はパニックを生み二次災害を誘発するので、あくまで最終手段であり、実行されるべきではない。

上述のように残念ながら僕にはティッピング・ポイントが分からないが、どこかに存在するはずであり、引き続き考察を試みたい。

原発のワーストケースについての試論

金融派生商品エクストリームスポーツに馴染みのない日本人にとっては、起きる確率は十分小さいけれど定量化できない致命的なリスクは非常に不気味で厄介なものである。
そこで今回の原発事故について真っ当な科学者なら書かないレベルのワーストケースについて考察をしてみたい。下記の考察は全くもって間違っている可能性があり、そもそもこれらは確率0の事象であることが証明できるはずである。

  • 福島に重さ100tの核兵器を投下した場合

原子炉内/燃料プール内のウランの量がどれくらいなのかよく分からないが、Wikipediaによれば必要な燃料の量は94t/yだそうなので、ウランの重さを100tとする。(不謹慎きわまりないが、思考実験として了承して頂きたい。)
これについては第五福竜丸被爆で有名なブラボー実験が参考になる。再度Wikipediaを参照するに震源地からの距離と放射線の総量は下図のようになり、
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Bravo_fallout2.png
例えば、真東に500km離れた地点では吸収線量の総量の推定値は100rad = 1Gy = 約1Svとなる。
ブラボー実験で投下された核兵器は重さ10tなので、10倍するに約10Sv。風向きに依存するのでこの場合の東京での被害を推定するのは難しいが、基本的には偏西風に流されることを考えれば総量で0.1Sv-1Sv程度となり、非常に危険ではあるが密封された地下室等に避難すれば深刻な健康被害は防げるレベルである。

ウラン濃度3-5%の原子炉用核燃料で核爆発が起きるのは、いくら何でもあり得ないので、もう少し現実的なケースとしてチェルノブイリ事故が福島で起きた場合を考える。チェルノブイリに関してはちょうど良いデータが見つからないので、下のセシウム137の放射能のデータから推測するに、
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Chernobyl_radiation_map_1996.svg
おそらく10Ci/km^2の地点で地上から1mの高さでの吸収線量は約0.1mSv/hぐらい。(http://www.cc.toin.ac.jp/tech/bmed/ft28/RSafty.htmlなどを参照)これはセシウムに限った数値だから、爆発後すぐに関してはI131なども考えるにだいたい10mSv/hとか。Wikipediaによると原発から30kmにいた人々の内部被ばくの量が総量で3-150mSvということなので、大きめに見積もりすぎているかもしれない。ウクライナジトームィルでの現在の放射能のデータから考えるに福島でチェルノブイリ事故が起きた場合、東京における外部被ばくの量は1mSv/hより小さく、短期間であれば健康への影響はないレベルである。
そもそもチェルノブイリの被害は一般にやや誇張して伝えられていて、実際に事故が原因で亡くなった方の大半は線量計も付けずに復旧作業に従事させられた作業員で、周辺住民への被害は限定的であった。

原発事故の状況はスリーマイル以上の深刻な事態に陥りつつあり、各地の線量計の値には今後とも注視していくべきだが、過度に恐れる必要はないように思う。

参考:Wikipedia
福島第一原子力発電所
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E7%AC%AC%E4%B8%80%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80
・Castle Bravo
http://en.wikipedia.org/wiki/Castle_Bravo
・Chernobyl disaster effects
http://en.wikipedia.org/wiki/Chernobyl_disaster_effects

東京に漂う幽霊

ここ数日東京の様子がおかしい。街中でも、TLの東京クラスタでも、人々が理性を失っているように見える。
皆が幽霊を怖がっている。

詳しくは、

・MIT研究者Dr. Josef Oehmenによる福島第一原発事故解説
http://blog.livedoor.jp/lunarmodule7/archives/2406950.html
・だからチェルノブイリとは違うって何度言えば分かるんだってばよ!原発についてまとめてみた
http://www.icoro.com/201103145746.html

あたりや、早野先生のtweetsを参照して欲しいが、今回の原発事故で東京にいて有意に被爆することはまず不可能である。これまでの政府と東電の発表は外部データと整合的であるし、物理学科の生徒として上述の説明が妥当であることを僕は知っている。
もちろん、絶対と言い切ることは出来ない。今後水蒸気爆発が起きちょうどその瞬間にソリトン状の非常に強い北風が福島から東京に向かって吹けば、あるいは東京でも十分な被爆が可能かもしれない。ただ、現状を見る限り人々は明らかに過剰反応している。(一方、現場作業員の方は規定量以上の放射能にさらされる危険性があり、その中で懸命に作業をして頂いていることには本当に頭が下がる思いである。)

  • 食料不足

商品はちゃんと入荷してます
http://d.hatena.ne.jp/nakamurabashi/20110315/1300127183

なぜだかよく分からない理由で世界中の国が鎖国を始めて、その上自然災害かなにかで西日本から東日本への輸送が不可能になれば、東京でも食料不足は起こりうる。でも、この確率は非常に小さい。各人の冷蔵庫/物置の容量には上限があるので、買いだめにより長期的に囚人のジレンマ的状況に陥ることはあり得ず、現に23区内ではスーパーに在庫が戻り始めている。

  • 節電と自粛

電力供給量が限られている以上節電は必要であるが、現状の対応は非効率であり幽霊化している。

課外活動の自粛について
このたびの東北地方太平洋沖地震に伴う計画停電及び交通機関等の状況にかんがみ、当面、課外活動は行わないようにしてください。
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/AntiDisaster/kagaikatudoujisyuku.html

例えば、上の通達は後者について無意味であり、前者については逆効果である。まず、東京の大学生の多くは、学校の近くで一人暮らしをしている。したがって、彼らは交通機関の運行状況に影響を受けない。また、一人当たりの電気使用量を考えるに、各人がワンルームに引きこもっているのがもっとも電気使用量が多く、全員が一カ所に集まって活動するのが最も少なくなる。つまり、節電を目指すならば、日中から夕方にかけて一人暮らしの学生を全員大学に集めるのが、一番効率が良い。その上、孤独に過ごすよりも寄り集まった方が精神衛生上良いのは明らかである。

  • 余震

「ヤバいのは北米プレートじゃないのか?」
1 :M7.74(広島県) :2011/03/13(日) 00:27:06.95 id:nqdexe/z0 (10 回発言)
震源地を地図上にプロットしていったら見事に北米プレートの3方向沿いにぐるっと囲んでいる
【3/11からの震源地の推移】
岩手、宮城、茨城、東京湾、長野、新潟
15 :M7.74(長屋) :2011/03/13(日) 01:24:51.74 ID:4yNYd/L+P (3 回発言)
昨日誰かがvipで予測しててその通り長野で地震が起こったんだけど、まあそうだろ
太平洋プレートに乗っかってユーラシアプレートに挟み込まれてる北米プレートが
M8.8で大きく動いてバランス崩したので安定しようと色々寝返り打ってる
http://logsoku.com/thread/hayabusa.2ch.net/eq/1299943626/

富士宮地震が発生したことで、余震という名の幽霊が再登場しつつあるが、富士宮が北米プレートとフィリピン海プレート(及びユーラシアプレート)との境界にあることは、上の説と整合的である。vipperにすら予想できるのであるから、かなり信憑性は高いと言えるし、少なくとも今回の地震東海地震(フィリピン海プレートユーラシアプレートとの間で起こる)に繋がらないことは確かだろう。これに関しても、不確定な要素はあり絶対とは言い切れない。しかし、現に僕らは遥かに高い死亡リスクを持つ事象と共に生きているので(交通事故や飲酒・喫煙・運動不足など)、取り立てて気にするのは不合理である。


科学は幽霊を否定することができない。幽霊は永遠に存在するし、その存在におびえることは合理的であり、それ故に逃げ出す自由は尊重されるべきだ。
しかし、一方で幽霊のいない世界を作ろうという先人の努力にも敬意を払うべきであり、原子核物理や経済学、地球惑星科学の知見は同様に、あるいはそれ以上に尊重されるべきじゃないだろうか。

なぜXはかくもカンニングを嫌悪するのか?

これについて僕は二度読み違えている。
一度目は、

カンニング問題について。
http://d.hatena.ne.jp/noarke/20100903/1283512943

で、大学の定期試験でカンニングした学生を擁護したら、軽い炎上状態に陥った。
二度目は前回の記事

すき家と京大
http://d.hatena.ne.jp/noarke/20110228/1298877402

で、上の記事で僕は、「行くぜCIA」のカンニング問題はもみ消されるだろうと予想し、文科省に厳しい対応を求めている。今となっては馬鹿みたいだ。
でも長期的には僕は正常なので、異常なのはXの方であり、その異常さは説明を要する。

  • X = マスメディア

マスメディアの支持層は「若者」と「インターネット」が大嫌いなのであって、必ずしもカンニングを嫌悪しているわけではない。ただ、「インターネット」を用いて「犯罪」をする「若者」は希少なので、ニュースバリューは高い。

  • X = 日本人

これも別に諸外国に比べて特別に嫌悪する理由は無いように見える。あえて言うならば日本企業にはびこる減点主義の影響で、軽犯罪者と重罪人との区別が分からなくなっているのかもしれない。

日本人が存在しないということ以上に、はてな民は存在しないのだけれど、学歴社会でそこそこの成功を収めてきた人々がカンニングを嫌悪するというのは納得できる。特に日本の学歴社会は卒業よりも入学をはるかに重んじるので、彼らにしてみれば、大学入試の正統性を脅かす要因はなんとしてでも排除しなければならない。

Xの規範意識が誰かの人権を著しく損なうものであるとき、Xの法にはそれを正す責任がある。法がその責任を全うしないとき、「正常」な人々はXから逃げ出すしかない。

すき家と京大

すき家で強盗が頻繁に起きていることについて、

すき家が防犯対策しない理由
ゆめみがちサロン
http://blog.livedoor.jp/yumemigachi_salon/archives/51680634.html

で説明されているように、今後強盗が増加してある臨界値を超えない限り、すき家自身には対策を打つインセンティブがない。しかし、強盗の頻発には明らかに負の外部性があり、例えば、警察が他の事件に十分時間が割けなくなるかもしれないし、強盗犯グループが住み着けばその地域の治安は悪くなるだろうし、「これなら自分でも出来そう」という形で善良な市民が強盗に目覚めてしまうかもしれない。したがって、国/地方自治体はすき家に対して対策をとるように指導して行かなければならない。

京大のカンニングの件もこの文脈が理解できる。aicezukiのようなあからさまな例は稀としても、スマートフォン全盛の現代において入学試験でのカンニングは一定頻度で起きていると容易に想像できる。しかし、依然として圧倒的多数の受験生は自力で問題を解いているので入試の正統性は保たれているし、カンニングによって合格するのは高々数人だろうから、それを放置しておいたところで生徒の質が下がるわけでもない。したがって、通信機能抑止装置の導入にかかる費用やチェックの強化に必要な教職員の負担を考えれば、大学側としては対策を打つインセンティブがない。
しかし、こうした現状は社会の規範意識に反するし、受験生をカンニングへの誘惑にさらしてしまう。今の日本社会における大学受験の占める比重の大きさを考えれば、これについても文科省などがしかるべき対策を促すべきだろう。