原発のワーストケースについての試論

金融派生商品エクストリームスポーツに馴染みのない日本人にとっては、起きる確率は十分小さいけれど定量化できない致命的なリスクは非常に不気味で厄介なものである。
そこで今回の原発事故について真っ当な科学者なら書かないレベルのワーストケースについて考察をしてみたい。下記の考察は全くもって間違っている可能性があり、そもそもこれらは確率0の事象であることが証明できるはずである。

  • 福島に重さ100tの核兵器を投下した場合

原子炉内/燃料プール内のウランの量がどれくらいなのかよく分からないが、Wikipediaによれば必要な燃料の量は94t/yだそうなので、ウランの重さを100tとする。(不謹慎きわまりないが、思考実験として了承して頂きたい。)
これについては第五福竜丸被爆で有名なブラボー実験が参考になる。再度Wikipediaを参照するに震源地からの距離と放射線の総量は下図のようになり、
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Bravo_fallout2.png
例えば、真東に500km離れた地点では吸収線量の総量の推定値は100rad = 1Gy = 約1Svとなる。
ブラボー実験で投下された核兵器は重さ10tなので、10倍するに約10Sv。風向きに依存するのでこの場合の東京での被害を推定するのは難しいが、基本的には偏西風に流されることを考えれば総量で0.1Sv-1Sv程度となり、非常に危険ではあるが密封された地下室等に避難すれば深刻な健康被害は防げるレベルである。

ウラン濃度3-5%の原子炉用核燃料で核爆発が起きるのは、いくら何でもあり得ないので、もう少し現実的なケースとしてチェルノブイリ事故が福島で起きた場合を考える。チェルノブイリに関してはちょうど良いデータが見つからないので、下のセシウム137の放射能のデータから推測するに、
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Chernobyl_radiation_map_1996.svg
おそらく10Ci/km^2の地点で地上から1mの高さでの吸収線量は約0.1mSv/hぐらい。(http://www.cc.toin.ac.jp/tech/bmed/ft28/RSafty.htmlなどを参照)これはセシウムに限った数値だから、爆発後すぐに関してはI131なども考えるにだいたい10mSv/hとか。Wikipediaによると原発から30kmにいた人々の内部被ばくの量が総量で3-150mSvということなので、大きめに見積もりすぎているかもしれない。ウクライナジトームィルでの現在の放射能のデータから考えるに福島でチェルノブイリ事故が起きた場合、東京における外部被ばくの量は1mSv/hより小さく、短期間であれば健康への影響はないレベルである。
そもそもチェルノブイリの被害は一般にやや誇張して伝えられていて、実際に事故が原因で亡くなった方の大半は線量計も付けずに復旧作業に従事させられた作業員で、周辺住民への被害は限定的であった。

原発事故の状況はスリーマイル以上の深刻な事態に陥りつつあり、各地の線量計の値には今後とも注視していくべきだが、過度に恐れる必要はないように思う。

参考:Wikipedia
福島第一原子力発電所
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E7%AC%AC%E4%B8%80%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80
・Castle Bravo
http://en.wikipedia.org/wiki/Castle_Bravo
・Chernobyl disaster effects
http://en.wikipedia.org/wiki/Chernobyl_disaster_effects