節電のティッピング・ポイント

学校もコンビニも飲食店も薄暗く暖房も効いておらず、電車は相次ぎ運休し、工場は操業を停止し、地域ごとの計画停電まで行っているのに依然電力供給が足りず、先日も夕方に大規模停電の発生する恐れから、会社員は日の高いうちから一斉に帰宅し、運行本数を減らした電車は超満員の混雑となった。
一体何が間違っているのだろうか。
おそらく、問題点は以下の3つで、
1) 家庭・中小企業での節電の不徹底
大企業はつるし上げを避けるために必至に節電を実行しているけれど、家庭と中小企業とは節電のインセンティブがなく必ずしも十分な努力をしてない。
2) オフピーク時の無駄な節電
東電全体で毎日1000万kw分の揚水発電が可能なようなので、深夜の節電も決して無駄ではないが、過度に意識する必要もない。http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1257949962
3) 分散・孤立化による電力使用量の増加
一昨日の記事(http://d.hatena.ne.jp/noarke/20110316/1300281913)でも書いたが、節電の影響で人々が分散・孤立化するとかえって電力使用量が増えてしまう恐れがある。

これについての包括的解決策を考える上での大きな制約は日本ではスマートグリッドが実施されていないことで、例えばエアコンにのみ電気は供給しないだとか、停電の恐れが生じた場合に自動的に洗濯機が止まるだとかは出来ない。したがって、最終的には個々人の努力にゆだねられることになるのだが、こういう一人一人の行動に如何にして影響を及ぼすかというのはマーケティングの分野で良く研究されていて、以下の3つの要素が重要になる。(以下「ティッピング・ポイント」/マルコム・グラッドウェルを参照)
a)少数者の法則
ある種の社会的な能力を持った少数の人間が非常に重要な役割を持つ。例えば、フォロワーの多いtwitterユーザは情報の拡散において重要である。
b)粘りの要素
特定の行動を広めるには、各人が継続して実行するような粘りの要素が必要になる。例えば、ACの「ぽぽぽぽーん」はその意味で成功している。
c)背景の力
人々の行動は想像以上に環境の条件に依存する。そのことを上手く利用しなければならない。

つまり、条件b,cを満たすような解決案を考案してアルファ・ブロガーなどにリプライしまくれば、誰でもこの電力危機から関東を救うことができる。でも、その解決案を考えるのは難しい。例えば、
i)電気代を10倍にして、差額分は復興のために寄付し、病院・電車などは免除する。
問題の根底は電気代が安すぎることにあるわけだし、居住地域によって電力供給量に差別が生じている現状を考えれば、この案の方が公平で良いと思われる。ただ、政府/東電がこの案を実行するとは思えず、あまり現実的でない。草の根的にできる運動を考えなければならない。
ii)夕方から夜の時間帯に同時多発的に野外イベントを開催する。
問題点1,3を踏まえるに、いかにしてピークタイムの人々の行動を制御するかが課題になる。一つの解決案としては、野外コンサートや花火、寄席などを開催して人々を集め、その時間帯に電気を使わせないというのが考えられる。ただ、子ども連れや高齢者を巻き込むためには地域ごとに小規模で実施する必要があり、その場合クオリティが保てず結局人が集まらないという事態になりうる。
iii)デマを煽る
食料不足や原発事故についてのデマを煽れば人々は勝手に関東地方から出て行くので、電力不足は解消する。今のところマスコミはこれに協力的であり、もしかしたら一番現実的な案かもしれない。しかし、デマの流通はパニックを生み二次災害を誘発するので、あくまで最終手段であり、実行されるべきではない。

上述のように残念ながら僕にはティッピング・ポイントが分からないが、どこかに存在するはずであり、引き続き考察を試みたい。