エネルギー貯蔵方法の比較

発電電力をバッテリーで貯めようとすると今の技術ではまだまだらしいが、余剰電力でビルくらいの巨大なゼンマイを巻くとか、巨大なおもりを釣り上げるとかして物理エネルギーとして保存したらいかがでしょうかね。
https://twitter.com/#!/ITALU/status/61330745582567424

確かに一見もっともらしいので、いろいろなエネルギー貯蔵方法について単位質量辺りのエネルギーを比較してみる。

  • 力学的エネルギー

1トンの物質を100mの高さに持ち上げた時に蓄えられるエネルギーは、
E = mgh = 1000 * 9.8 * 100 = 10^6 J
なので、1g当たりのエネルギーは、1J/gで、発電量に換算すると0.27mWh/gとなる。(1gで0.27mWの電力を1時間供給できる。)
揚水発電はこの原理を使っていて、大量に発電するには巨大なダムが必要となる。

  • 化学エネルギー

例えば電池を考えるに、単三のマンガン乾電池の容量は1Ah。
電圧が1.5Vだとすると、蓄えられているエネルギーは1.5Wh。
http://home.s00.itscom.net/large/ELEC/batt-1/index.html
電池は一つ30g程度らしいので、1gあたりの蓄電量は50mWh/gで力学的エネルギーに比べ約200倍も効率が良い。

石油や天然ガスも化学的なエネルギー貯蔵方法の一つで、プロパンガスを例にとると、
C3H8 + 5O2 -> 3CO2 + 4H20
という反応式にしたがって燃焼し、燃焼により放出されるエネルギーは、
3*(-393.5 kJ/mol) + 4*(-285.8 kJ/mol) - (-103.8 kJ/mol) = -2220 kJ/mol より、2220kJ/mol となる。
icho.csj.jp/36/pre/P-5ans.pdf
プロパンは44g/molなので、1gあたりの備蓄エネルギー量は50.4kJ/g = 50.4kWs/g = 14 Wh/gとなり、乾電池と比べても280倍効率がいい。
ただ、プロパンは乾電池と比べて備蓄が困難であるし、発電に用いるとなるとエネルギー効率は20-30%に落ちる上、発電所の施設の重さも考えると単位グラム当たりの備蓄エネルギー量は少なくなる。

放射性元素核分裂をすると、質量欠損が生じその分のエネルギーが解放される。
ウラン235の場合、核分裂により1g当たり約0.68mgの質量欠損が生じるので、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BA%83%E5%B3%B6%E5%B8%82%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%AD%90%E7%88%86%E5%BC%BE%E6%8A%95%E4%B8%8B
備蓄エネルギー量は、0.68mg*c^2 = 6*10^10 J/g = 1.7 * 10^7 Wh/g
これは、プロパンガスの約100万倍であり、これほどまでに人々が原発にこだわる一因はこの圧倒的なエネルギー密度にある。


つまり、重力ポテンシャルによりウラン235と同量のエネルギーを蓄えるには、約1000億倍の質量が必要となり、費用対効果を考えるにあまり望ましくない。ただ現状では、ウラン235や石油を人工的に生成することはできないので、揚水発電などの力学的エネルギーによる貯蓄も使われている。