原発事故と3つの比喩

なんだかよく分からないものが生じたときに、既存の何かとの類似点・相違点を考えることは一つの正攻法である。
1,デリバティブ原子力
/類似点

  • 関わった人々の死亡リスクをキョリに応じて上昇させる。
  • 間接的な影響をほぼ全ての人々に及ぼし、強い社会的関心を惹く。
  • その科学的な本質(デリバティブ原子力)を一般人に理解してもらうのは困難。
  • 専門家も起こりうる最悪のシナリオとその確率とを正確に評価できない。
  • 自称知識人が的外れな批判を繰り返し、マスコミがそれを助長する。
  • 事態の収束に数ヶ月から数年がかかる。

/相違点

  • 借金は自己破産して消すことができるが、被爆量は一生消せない。

実体経済とマネタリーは漸近的に独立であり、その極限でフィリップス曲線は存在しない。

  • その科学的な本質のマスメディアの取り扱い

リーマンショックの時はマスメディアでCDOCDSについて解説されることはなかったが、今回の原発事故で各テレビ局は専門的解説を試みている。


2,遺伝子組み換え食品と原子力発電
/類似点

  • 全人類に繁栄をもたらす画期的技術
  • 高度な科学に基づいており、その潜在リスクは一般人に正しく理解されていない。
  • 先進国での反対運動により、これらの技術を本当に必要とする発展途上国にも提供されないでいる。
  • 実際は環境に優しいはずであるが、なぜか環境活動家からの評判は悪い。
  • 主に国と癒着関係にある巨大企業により運営されている。

/相違点

  • 科学的知見の量

原子核物理は深く理解されており、原子力発電により未知の物質が生成することはないが、遺伝子は依然未知の部分が大きく非常に小さい確率であるものの予想外のバイオハザードが起きる可能性がある。

  • 歴史の長さ

有性生殖は一種の遺伝子組み換えでありその意味で遺伝子組み換えは非常に長い歴史を持つが、原子力発電で用いられるウランの連鎖反応と人類の付き合いは高々100年程度である。


3,社会主義の終焉と原子力発電からの脱却
/類似点

  • かつては夢の代替技術であった。
  • 一つの亜種が失敗に終わったことで、全ての可能性が捨て去られた(or捨て去られようとしている)。
  • 一極集中型のシステムである。
  • 超小型化することで生き残れる(かもしれない)。

科学コミュニティやオープンソース運動、ネット上の様々なコミュニティ上では共通目的に奉仕する社会主義的行動が多々見られる。それと同様に

浴槽サイズの「ポータブルな原子力電池
http://wiredvision.jp/news/200711/2007112822.html

の方向へシフトして行けば、あるいは原子力発電も生き残れるかもしれない。
/相違点

  • 価値観の有無

社会主義は特定の価値観を持つが原子力発電は価値観に対して透明である。