五月の読書日記

四月の読書日記の次の記事が果たして五月の読書日記で良いのかとは思うものの、最近ネタが枯渇気味なので、読書日記でつなぐ。

  • さようなら、ギャングたち

 個人的にスゴく大切な本。好きだとか面白いとかいうのではなくて、純粋に年に一度は読み返したいと思い、実際にそれ以上の頻度で読んでいる一冊。
 「明日に向かって撃て」を見て何となくまた読みたくなって読んだ。この本に関してはあまり書評じみたことを書きたくはないのだけれど、例えば僕が将来的にゼロ年代やその時代を生きた自分を総括する必要が出てきたとき、こういう書き方を目指すだろうなあとは思う。

これを買ったときに、twitter

・ずっと読もうと思っていたものの表紙がアレで手を出せずにいたドグマグをついに買った。死ぬまでに読みたい一万冊のうちの二冊。
・希望の本質は死ぬまでに読みたい本がまだ一万冊もあることではなくて、その大半がまだ書かれてすらいないことである、みたいな。

 と書こうと思ったんだけど、twitterで「死ぬ」とかいう言葉は出来る限り使うべきでないだろうなと思って辞めた。
 希望を抱くのに未来の期待値が現在のそれを上回っている必要はなくて、ただ現在の僕の周りの世界はそう長くは保つはずがなく、いずれ変わっていくだろうという推測が可能であれば十分。

 「精霊たちの家」に比べると、どちらも個人的にはピンと来ない感じ。どうもアメリカ人やイギリス人がラテンアメリカについて書いた文章は、ラテンアメリカの作家のそれと比べて浮ついた感じがする。老いぼれグリンゴの時代よりもさらに危険な今のメキシコに行こうとは思わないけれど、パタゴニアは一度行ってみたいと素直に感じた。
 上で「明日に向かって撃て」を観て「さようなら、ギャングたち」を再読したと書いたけど、「明日に向かって撃て」を観ようと思ったのは、「パタゴニア」の中に出てくるブッチとサンダンスのエピソード読んで、興味を持ったから。こういう鎖をつなぐような文化受容を今後も意識していきたい。

 学術書読書メーターなどに載せるべきか微妙で、一応真面目に読んでる本は載せないで、ネタ半分趣味半分で読んでいるものは乗っけるようにしようかと思っている。
 甘利先生の論文はどれも基本的に読んでてワクワクするというか、何が面白いのか明示的に書かれているので好きなのだけれど、本書でもそうした良さがよく現れていると思う。少なくとも、シャノンの「通信の数学的理論」よりも本書をまず先に読むことをすすめる。

  • 初秋

 ハードボイルドものっていうのは読んだことがなかったから新鮮だった。ぼっちについて最近よく考えるのだけれど、昔の人々は今の僕らより遥かにぼっちだったはずで、そこいらの一般人がfollowerを1000人抱えているような現状がおかしいし、コミュ力なんてものは幻想に過ぎない。ハードボイルドだってある種のぼっちなわけで、孤独それ自体は別にネガティブなものではない。
 この本を薦めてもらったとき、30代になって子どもを育てるようになったら、思い出すような類いの本だと言われたのだけれど、教育的見地からいうと本当にそうだろうかと、疑問に思う。小説だから仕方がないにしても、あまりに上手く行き過ぎてる。もちろん、ティッピングポイントのようなものはあるのだろうけれど、それを探すのはもっと困難なはずで、いくらハードボイルドでもそう簡単にはメンターは勤まらない。


5月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:2596ページ

さようなら、ギャングたち (講談社文芸文庫)さようなら、ギャングたち (講談社文芸文庫)<
読了日:05月26日 著者:高橋 源一郎
ドグラ・マグラ (下) (角川文庫)ドグラ・マグラ (下) (角川文庫)
読了日:05月25日 著者:夢野 久作
パタゴニア/老いぼれグリンゴ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-8)パタゴニア/老いぼれグリンゴ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-8)
読了日:05月21日 著者:ブルース・チャトウィン,カルロス・フエンテス
情報理論 (ちくま学芸文庫)情報理論 (ちくま学芸文庫)
読了日:05月19日 著者:甘利 俊一
ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)
読了日:05月18日 著者:夢野 久作
On the Road (Essential Penguin)On the Road (Essential Penguin)
読了日:05月06日 著者:Jack Kerouac
初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)
読了日:05月04日 著者:ロバート・B. パーカー

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