ロブスターだらけの世界の人口論

分業 -> 生産性の向上 -> 利潤の発生 -> 労働者の賃金の上昇 -> 生活水準の向上 -> 幼児死亡率の減少 -> 人口増 -> 労働供給の増加 -> 賃金の低下 -> 投資の増加 -> 生産性の向上 -> ...
という形で、労働市場も自己調整機能を持つ。このとき、穏やかな人口増と共に富が形成されていく。しかし、生産性には上限値があり、最終的には人口の増加が止まり、労働者の賃金は最低限生活可能な水準で落ち着く。

人口は指数関数的に増加するが、生活の糧は多項式でしか増加しないため、人類の大半は常に何らかの不幸に遭遇することになる。1970年代には50年後に世界の人口は200億人を超えると予想されていて、上の説は真面目に検討されていた。

分業 -> 生産性の向上 -> ... -> 人口増
というロジックはアダム・スミスと同じ。ただ、その効果の解釈は異なり、
人口増 -> 食料需要の増加 -> 穀物価格の上昇(耕作可能面積は有限) -> 賃金の上昇 -> 資本家は損を、地主は得をする。
穀物価格の上昇が賃金の上昇をもたらすというロジックは現代的な感覚では分かりづらいが、当時の労働者の賃金は生きて行くために最低限必要なギリギリの額であり、食料価格の上昇は労働者の飢餓をもたらす危険性があった。

  • ヴィクトリア期

富の再配分として労働者階級への教育が行われたこと、都市化が進み、農村では財産であった子どもが負債だと考えられるようになったこと、植民地への投資で経済が潤ったこと、などによりヴィクトリア期以降西欧において人口増は問題ではなくなった。