ニートの合理性

OECDの調査によれば、日本の25-29歳人口のうち20%がいわゆるニートであるという。これはおそらく専業主婦なども含んだ数字で、内閣府の2002年のデータによると、ニートの人口は15-34歳人口の合計で85万人とのこと。
実態は定かでないがともかくこれだけの数のニートが存在する以上、ニートであることがある局所的な状況においては合理的な選択肢であるというのは間違いない。
たとえば、以下のような繰り返しゲームを考える。
日本には、労働者Aとブラック企業Bのみが存在するとし、AがBに内定している状態を始状態とする。
毎年4月にAは仕事を続けるかどうか(y/n)を、BはAに賃金を支払うかどうか(y/n)を決定する。
このときそれぞれの(y/n)の決断について、A/Bの効用(Ua,Ub)を以下のように定める。
(y,y) -> (3,3) : 普通の労働契約
(y,n) -> (0,5) : Aはただ働き。
(n,y) -> (5,0) : Aは給料を受け取りずらかる。
(n,n) -> (1,1) : Bは中国人を雇って利益を得る。
双方が、「去年まで相手がyならばy、それ以外ならばn」という戦略を取ると仮定する。
初年度について、割引率をdとすると、労働契約を結び続ける時の効用の現在価値は、3/(1-d)
一方、裏切ったときに得られる効用は5+d/(1-d)
したがって、d<0.5のとき裏切る方が得られる効用が大きく、労働者Aが新人研修合宿でドロップアウトし、企業Bが内定を取り消して中国人留学生を雇うというのが、均衡解となる。
つまり、労働者Aが十分に刹那主義者であれば、ニートは合理的な選択であると言える。

>訂正(12/15/2010)
微妙に間違ってた気がするので訂正。
d<0.5のとき、「去年まで相手がyならばy、それ以外ならばn」という戦略がナッシュ均衡を与えないというのは正しいのだけど、初回で相手を裏切るという戦略がナッシュ均衡であることは非自明。けれども、d->0でただの囚人のジレンマに収束するので、dが十分小で裏切り続けるという戦略がナッシュ均衡を与えるというのは多分正しい。