ファーゴと松ヶ根乱射事件

松ヶ根乱射事件がファーゴを意識して作られたことは不必要な一致が多さからして明らかだろう。
例えば、

  • 冒頭でノンフィクションであることをほのめかす
  • 雪と血のコントラスト
  • 警官がメインキャラ
  • 処分に困った遺体/金の常軌を逸した処理法

などが挙げられる。
だからこそ重要なのはその差異であって、特にラストシーンにおける警官の描かれ方の違いは興味深い。
ファーゴでは夫婦愛を語る穏やかなシーンで終わるのに対し、松ヶ根では最終的に発狂する。

発狂というのは完全なる発狂ではなくて、「松ヶ根は不条理の固まりであって、いくら警官であってもその事実から眼をそらして生きていこうとすると、絶望的に発狂する。であるから自らも赤塚不二夫の世界の住人よろしく適度な不条理と化さなければならない」という意味での発狂に出来ず、ある意味適応である。
恐ろしいことだが、不条理の固まりとしての地域コミュニティーはおそらく現に存在する。そしてそうした片田舎の住人たちは自らを適度な不条理へと変移させて生きているのだろう。
ファーゴよりヤバい世界はかなり身近に存在している。