漁船衝突事件の論点整理

日中交流停止 中国外務省が表明
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1545311.html

なんだか雲行きが怪しくなってきた漁船衝突事件について。
この事件について、日本側の主張からまとめると、

日本の領海で、中国の漁船が海上保安庁の船に意図的にぶつかってきたため、日本国内の法律に基づき船長を逮捕した。

となり、中国側からすれば、

中国の領海で、中国の漁船と日本のパトロール船とが衝突し、なぜか漁船の船長が日本に身柄を拘束されている。

という状況になっている。以下論点整理。


1,領土問題
日本のオフィシャルな見解によれば、尖閣諸島及びその周辺の海域は日本の領土であり、そもそも領土問題は存在しないということになっている。
一方、中国側によると、

北京当局は、釣魚島を含む南シナ海の大部分は中国の領土であるとして、周辺諸国と対立している。
外務省広報官のYu氏によれば、「諸島は中国固有の領土であり、だれも事実は変えられない。歴史資料を見れば、初めに諸島を見つけたのは中国であり、その後も管理してきたことは一目瞭然である。」
"China blasts Japan, demands immediate release of fishing captain" CNN
http://edition.cnn.com/2010/WORLD/asiapcf/09/14/china.japan.boaters/index.html?iref=obinsite

とあり、また、

中国側では釣魚島と呼ばれているその島は、周辺の地下資源をねらう東京と北京が双方に領土権を主張している。現在日本が管理している諸島の周辺は、豊富な漁場であり石油や天然ガスが埋まっている可能性も高く、台湾も領土主権を主張している。
"Japan frees 14 Chinese fishermen, holds on to captain" The Guardian
http://www.guardian.co.uk/world/2010/sep/09/japan-china-fishing-boat-collision

ともあり、日本固有の領土だとは、国際的に認識されている訳ではないようである。


2,衝突は故意か?
漁船船長の主張によれば、衝突は故意ではないということだが、日本政府側は衝突時のビデオ映像を分析した結果、故意に衝突したとしか考えられないと述べている。
ここで疑問なのはなぜ日本政府がビデオ映像を公開しないのかという点である。
例えば、シーシェパードの事件の時は、日本の船に向かって攻撃をするシーシェパードの船の映像をいち早く公開することで、国際世論を「捕鯨は問題だけど、シーシェパードのやり方は間違っている。」という方向に持っていけたわけで、今回もビデオ映像を公開することで「領土問題は憂うべきだが、パトロール船に突っ込むのは間違っている。」という方向にもっていけるはずである。それをしないで、中国側の強硬姿勢を批難するのは無理がある。


3,両国の強硬姿勢の原因
中国側が強硬姿勢に出ているのは、随所で指摘されている通り、国内問題のガス抜きが目的だろう。しかし、日本側が歩み寄ろうとしないのはどういうわけだろうか。ひとつには、小沢・岡田政権から管・前原政権へと移行したことで対中戦略が変化したというのがあるだろう。しかし、常識的に考えて日中関係の悪化を経団連や関係議員が許すはずがなく、どうも理解できない。


いずれにしろ事の本質はただの衝突事故であり、両国関係者には冷静な対応を求めたい。